本学の空手部は1931年創部。松濤館の空手を継承。
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Member of the British Empire 叙勲に寄せて
■Member of the British Empire 叙勲に寄せて
                                                                        2007年10月18日: 昭和28年卒 原田満典
  事実は小説より奇なり、と言うが80才を目の前にした私の人生も奇の一生と言えるかもしれない。空手を始めた現役時代、空手で一生を送るなど考えてもみなかったし、まして外国で50年も暮らす事になるなぞ想像も出来なかった。殊に現役時代の空手の実力から見てもこれは奇跡とも言える。

  背景は、江上 茂先輩との出会いであった。新人の時から同先輩の事は、種々、現役先輩から聞かされていはいた。初回は昭和29年頃である。道場で独り巻ワラを突いていたら、目付きの鋭いオロチョン族の様な風貌の人物が、横に立って私が不動立ちのような姿勢で、両手を軽く膝に垂らした構えからの突きをじっと見ていた。写真で先輩の顔を知っていたので、しまった、これは怒られるな、と恐る恐る顔を見たら、お前面白い巻ワラ突きをしているな、と言われこれが切っ掛けで先輩に稽古を付けて戴く事になった。

  条件は、追い突き、逆突き、前蹴りの基本、騎馬立ちからの左右の突き、これを毎日、日曜祭日休み無しで稽古を続ける。以後、組手は絶対しない。この中で一つでも破る事があったら直に稽古は中止する。と言う事で先輩に指導をお願いする事になった。
  追突きから始めたが、一回一回の突きを転倒し続けられない。そこで逆突きから始める事にした。第一に驚いたのは、こちらの中段突きを先輩が下段払いで受けられる訳だがその一つ一つが、文字通り払いで全然痛く無い事だった。これなら毎日稽古が続けられるとほっとした。当時の下段払いは、相手の腕をこちらの腕で思い切り叩くと言うか、殴り付ける下段払いで5,6回もこれをやられると、痛くてとても続けれるものではなかった。その話をした所、笑いながら、塵を払うときに力を入れて叩く奴はいないよ、と言われその後先輩が話される事が全て従来の空手の定説と言うか、常識とは全く違ったもので、かなり面食らった。
  全身は余計な力を入れたり、力んだりせず結ったりせよ。

  突きは肩の力を完全に抜き、引き手の位置から肘を投げ飛ばすように突け。また手ではなく、足で突く事が肝心だ、と言われ中々分からなかった。兎に角事あるごとに、固くなるな、力むな、と言われたが、突きや蹴りを何百回、何千回とやれば強くなると、教えられ強要された稽古にうんざりしていた、私にとって本当に楽しく且つ充実した稽古であり、今、思い出してみても、私の生涯で最も生き甲斐を感じた時だと思っている。
  江上さんの突きは、外から見る限りでは、柔らかくふわっとした感じの突きで、当時の常識から見て、とても強いとは思えない突きだが、何枚か座ぶとんを重ねて腹に当てて受けて見ると、きいた突きというのか、抜け後ろに通る突きであり、外見とは全く違った突きであった。
  突きに関し、話し合った折、私が先輩、空手の突きで相手に当てずに、相手を倒す事が出来るものでしょうか、と尋ねた所、勿論出来るよ。お前、突きだけに生涯を掛けてやってみろよ、必ず出来る、とうまく煽られてとうとう追突きだけに、一生を掛ける結果になった。最近どうやら、感じだけは取れる様になった。

  Dream cames truthと言うか、何とか感じを次の世代に伝え、是非実現して貰いたい、と念願している。
  突きを相手に当てずに相手を倒す、こんな話をプロと称する空手教師に話をすると殆どの者が、嘲笑し話を聞こうとしない。ウエールズに来て、たまたまラグビーの人々と知り合い、その話をした折、彼らはIt is possible.とかIt could be happened.と言い、頭から否定しなかった。話を聞くと試合中、たまにそんな事が起こるらしい。両者が猛烈なスピードでぶつかり合う時に相手の体に軽く触れた時とか、殆ど触れたと言う感じが無いのに相手が吹っ飛ぶことが間々あるらしい。問題はそのときの条件である。どうも空手をする連中には、何故、どうしてそうなるか、この種の好奇心が乏しく、観念化した常識や定説だけのマンネリズムの稽古しかしない者が多い様に思う。

  考えてみると江上先輩から教えられた事は、空手だけで無く、物の見方、考え方で有り、異文化、異風の社会に長く住んでいる私にとって貴重な教えであったと思う。
  最後に、investitureの模様を、お話しします。10月18日朝、バッキンガム宮殿に赴き、女王陛下に謁見、MBEの勲章を戴いてきました。

  儀式は、大きなボール ルームで行われ、一人一人名前を呼ばれ、授与の理由が述べられます。

  日本人は、私一人、武術家の叙勲は、前代未聞の出来事である様で、まるでエイリアンが現れたと思われる雰囲気でした。式の始まる前に大きな控え室で、金モールの武官から謁見時のマナーの説明を受けるのですが、矢張りみんな緊張して固くなっていました。部屋の両隅にテーブルが置かれ飲み物が用意されているのですが、これがミネラルウォーターとジュースだけなんです。水を飲んでいた一人が、ジンかと思ったらただの水じゃあないか、こんな時にこそアルコールが欲しいのに、女王も『けち』だなあと、ぼやいたので大笑いになり、気分がほぐれ雰囲気が和やかになりました。

  女王陛下の前に立った折、我々は頭を下げるだけでよいのですが、Ladysは、右足を少し後ろに引き足を交差させて、膝をまげるんですな。例の武官がやって見せ、説明した所、Lady達、一斉に練習を始め、一人が後ろに転倒し、見兼ねる姿勢になりました。武官が早速抱き起こしながら、リハーサルの時でよかったですね。  本番では、充分に気をつける様、と云ったので、一同笑い合いましたが、Ladyの中にはこの為、より緊張した人もいた様です。

  式典の後は、中庭で記念写真を撮ったのですが、その時に数人の人々から、おめでとうKarate Masterと握手をされ、栄誉の喜びをShareしました。

  バッキンガム宮殿から退出する際、改めて空手をやっていて本当によかったと、思い直しました。




 


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